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新期1日目の11月1日、7Rでボートレース史上最高配当が飛び出した。勝ったのは6号艇の黒明花夢。2日目1RでFを切り、その後は6、6着だったが、何と寺田千恵と日高逸子を破り地元初勝利。通算4勝目を挙げた。3連単は76万1840円をつけ、2011年5月22日、徳山の68万2760円を更新。歴代最高配当を記録した。
祖父は、『黒い弾丸』と呼ばれ、全速ターンでボート界に革命を起こした黒明良光氏。19年11月に、花夢は黒明氏の孫として注目のデビューを飾った。あれから3年。思うように成績を残せず初勝利は21年6月11日江戸川。2勝目は今年8月5日平和島でイン逃げ、3勝目は9月17日に常滑でのまくり差しでいずれも3連単万舟券。4勝目の地元初1着は超高配当となった。
デビュー当時は児島ボートに練習に通い、連日祖父の家を訪ねて教えを請うていた花夢だが、コロナ禍で足は遠のき、祖父宅の玄関ドアにお土産袋をかけて帰るようになった。厳しすぎる祖父の指導を受け入れられなくなり、2人に距離ができた。そんな中での地元初勝利。当地の専属解説者である黒明氏だが、孫が地元レースに出場する際は片山晃氏に解説を委ねて自宅観戦。黒明氏は「展示を見ていたら、以前より乗艇姿勢が良くなっていた」と花夢の成長を見て取った。
そして、花夢は初日3着。だが、レース後に寺田から厳しく指導されていた。「勝ちたい気持ちは分かるよ、でもね…」と寺田は道中の走り方を徹底指導。気持ちが先走り、事故につながる航法をしてはいけないと口を酸っぱくして伝える。伝わるまで伝える。それが、寺田だ。2日目にFをしてしまった花夢は「道中の走り方を勉強します」と気持ちを切り替え練習に励んだ。その結果が4日目の快挙につながった。決してたまたまではない。
寺田は序盤苦戦していた赤澤文香にも声を掛けていた。赤澤は「自分が試したペラがことごとく失敗。寺田さんにアドバイスしてもらったペラを試す」と調整を変え、3日目から足色は一変。勝負駆けに成功し予選を突破した。大記録を打ち立て取材が殺到した花夢は「赤澤さんのアドバイスを信じて行った」とコメント。レース後も赤澤が花夢につきっきりで指導していた。赤澤がペラ修正室へ向かい、花夢がそれに続こうとした時、再び取材が始まった。花夢への写真撮影と取材が長引いていたその時、寺田が現れた。「もう仕事をさせてあげて」とピシャリ。『寺田ポリス』の一声でお祭りムードは終演。勝負駆けの予選最終日の空気へ戻った。
黒明氏は常々言っていた。「自分が教わったことを後輩に教えるのが先輩の役目。切磋琢磨(せっさたくま)して支部全体のレベルが上がらないと個人ものびない。岡山の女子が強いのは寺田のおかげ」と。今大会は寺田率いる岡山勢が大活躍。12人中9人が準優に進出し、黒明花夢は祖父の名ではなく、自身の力で艇史に名を刻んだ。花夢は「道中はドキドキしたけど、強い先輩に勝って気持ち良かった。おじいちゃん、連絡をくれるかな」と涙ぐんでいた。こんなドラマがあるからボートレースは面白い。いよいよシリーズは終盤戦。真のドラマがクライマックスを迎える。
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