レーサーズボイス
 グランプリシリーズに出場できなくて3年。カミさん(元レーサーの横西奏恵選手)に「シリーズ戦にも出られなくなったの?」って笑われました(笑)。正直に話すと、カミさんと引退について話をしたことがあります。モチベーション的にもういいかなっていう。カミさんは俺がすげえワガママなのを知っているし、言い出したら聞かないのも分かっているんですよ。でもこの時は本気で止められました。今年、次女が小学校に入るんですけど、父親の職業欄に「無職」って書くのは嫌だからもう少し頑張れと(笑)。よくよく考えると、確かに自分の親が無職ってちょっとかわいそうかなって。その後も中学校や高校もあるわけだし。
 娘の小葉音? まだまだです(笑)。デビューする前に椎名豊に世話を頼んだんですよ。ちょうどそのころ椎名が記念にちょくちょく出るようになって、考え方や行動を見ていたら、こいつなら任せられるって思って。俺からお願いしました。だって俺が師匠になっても甘やかすだけだと思ったので。だから俺は面倒を見たことはないんですよ。もちろん着順とかは気にしますよ。でも最近はレースが終わった時に「レース見て」って言ってくることがあります。その時は一応、アドバイスするけど…。まだまだレベルを上げないとね。
 濱野谷(憲吾)さんや(原田)幸哉さん、辻(栄蔵)さんがSGを久々に取りましたけど、純粋に強いからですよ。力がある人が勝ったんですよ。この年代のレーサーは、記念レースでも若手は外コースからっていう風潮だったので、外コースばかり走って基本的な部分、力を養ってきましたから。そういう人間の集まりなんですよ。今みたいにすぐコースを取ってどうとかっていうのじゃないんでね。今の記念って6コースから水神祭ではないじゃないですか。でも僕らより上の世代は、みんな外から自分の力でやってきた世代。記念レースでもダッシュ戦で戦ってきたんですよ。そういう人が固まっているんですから、そりゃ強いですよね。
 僕もマスターズ世代になりましたが、衰えを感じたことなんて全くないですね。むしろ進化しかないと思ってるから。ひとつのレースに対してもいろんなことが分かってくる。強くなることはあっても、弱くなることはない。考え方の部分でね。
 あと、久々のインタビューなのでついでにもうひとつ。山口支部の若手にもっとGⅠやSGに出てきてほしいですね。他県に比べると、一緒に記念を走るレーサーが圧倒的に少ない。僕のこの言葉を発奮材料にして早く出てきてほしいですね。早く来ないと、僕がいなくなっちゃいますから(笑)。
 言い始めたのは、だいたいの人は「応援してください」って言うんですけど、デビューしたての頃はそういうのもおこがましいなって思って「見ててください」と言うようになったんですよね。
 いまどういうところを見てほしいか? エ〜、どういうところだろう(笑)。セールスポイントというのがないと自分では思っているんですよね。ただ見ていてくれたらいいかなって(苦笑)。
 女子戦の4つのタイトルは全部獲りたいです。もちろんQC優勝したいですよ。それが当面の目標です。それと、これから混合GⅠのあっせんも入れてもらっているので、そこでいい結果を残していきたいですね。
 レディースオールスターという大会があるのはもちろん知ってましたが、出られるなんて思っていなかったから、投票結果も全然見てなかったんです。知った時は「えっ!」ってなりました。
 髪をバッサリ切ってショートにしました。レースの時も楽だし、女子レーサーにもそっちの方が可愛いよって言ってもらえました。でも佐賀支部の男子の先輩には「お前、デビューしたての訓練生みたいだぞ、技術も訓練生みたいになるなよ」って言われました。ホント失礼な話ですよね(苦笑)。
 でも先輩方には、女子は体重が軽いので握って回る方がいいよと言われました。なので道中では外を握って回ることを心がけています。まだ失敗することもあるんですけど、思い切ったターンを見てほしいです。
 チルト1度を始めたのは、気温が高い夏場にエンジンの回転を上げることが目的でした。草場康幸さんに相談したら、「大村はピット離れを気にしなくていいからチルトを上げてみたらどうだ」って言われて、試してみたらメチャクチャエンジンが出たんです。ただその時はスタートが行けなくて中途半端な感じになっちゃったんですけどね。
 プロペラの形が似てる人もいなかったので、基本的には一人で、試行錯誤しながら反応が良かった形を進化させながらやってきました。高田ひかるや藤山翔大さんと一緒の節で情報交換しましたけど、こんなアプローチもあるんだって驚きました。僕は試したけど、全然伸びませんでした。
 僕、後輩に対して教えることは得意ではないんですよ。「来た球はバーンと打つ」っていう長嶋茂雄さんタイプです(笑)。人間の感情は喜怒哀楽がありますけど、「怒」の感情っていらないと思うんですよね。怒ると、怒られた方だけでなく、自分も周りの人も損をすると思っています。レースに対しても同じです。たとえ予期しないことが起きたり、誰かに突っ込まれたとしても、「レースは水物だから」って思います。
 ファンから見ても誰から見てもクリーンな勝ち方をしたい。そんな自分が昔からいるんですよ。ちょっと美化した言い方かもしれませんが、そういうレースをしていたら、結果的に負けないと思うんですよね。これだけは自分の中で変わらないこだわりです。
 20代の頃は、表現は悪いですけどわがままに生きてきたと思います。30代の頃から周りを見なきゃいけないという意識も生まれてきました。やっとボートレーサーという自覚が芽生えたという感じですかね。そして今は、今の自分を評価するのは難しいことですけど、日々をアップデートしながら来ているのかなと思っています。
 去年、同世代のレーサーが何人もSGで優勝したことについてどう思うか? 難しいですね。ただ、客観的に見て、今のボート界ではSGに出ているメンバーなら誰が優勝してもおかしくはないんだと思います。こと優勝する、勝ち切るということに関しては群雄割拠というか実力が拮抗しているんじゃないかと思います。
 ボートレーサーになったのは、競輪選手だった父の影響です。父から「ボートレーサーになるしかないぞ」と言われてました。姉(哉)もレーサーになったので、逃げられないですよね。高校時代はハンドボール部に所属していました。土屋南先輩も違う学校のハンドボール部に所属していて、一緒に養成所の試験を受けたこともありました。自分は11回目の受験でようやく合格しましたが。
 養成所チャンプ? 確かになりましたね(笑)。ただ、デビューしてしまえば、本当に関係ないですね。今どれだけ頑張れるか。
 2月に子どもが生まれたんですけど、本当に感動しました。これからもっとお金がかかるし、自分が頑張って稼がないと!
 すごい支部になったなと率直に思います。20年前、僕が20代で記念に行き始めた頃の滋賀支部の全国的な知名度を考えれば、すごい支部になったなって。史上初の女子SG覇者がまさか滋賀支部から出るとは…。奇跡ですよね。みんながんばったし、それこそ相乗効果もあったのかなと思います。あいつができるならオレもできるって。
 もともと、僕がマイペースかもしれないけど、ここまで一生懸命やってこられたのは中村有裕がSGで勝った(06年メモリアル)のを見て、こんな弱小支部からもSGで優勝できるレーサーが出てくるんだと感動したからです。まさか実際に勝てるとは思っていなかったですけどね。それも40歳を過ぎてから、そろそろアカンのかなと思い始めたときに(苦笑)。
 SG初出場したダービーでボコボコにされて、まだまだここにいるべきレーサーではないなと思いました。初めてだからと緊張することもなく、いつも通りだったんですけど…。レーサーになる前、バイクのレースで大きな舞台を経験したこともあったので、緊張するより、楽しめる方だとは思います。だからあの結果は単に技術不足ですね。
 レース前は水神祭とか考えていましたけど、そんなことよりもっとレベルアップしなければと思わされました。レースの仕方が全然違いました。
 それでも出場できたことはいい経験になりました。やっぱり厳しいレースの方がメチャクチャ楽しかったです。ずっとここにいたいなって思いました。悔しさ以上に、この舞台、最高やなって。
 成長のきっかけ、ひとつは丸野一樹さんがやってる“マルトレ”に力を入れ始めたこと。僕が伸び悩んでいた時に「騙されたと思ってやってみよう」と誘ってもらったんです。筋力アップしてボートの安定感が増したこと、私生活からボートのことを考える機会が増えたのも良かったんじゃないかと思います。
 もうひとつは初優勝。たまたまいいエンジンを引いて、初優勝できたということで自分でも優勝できるんだという自信につながりました。初優勝してからは、毎節優勝を狙って走るという意識に変わりました。これは気持ちの変化として大きかったと思います。
 目標は勝率7点と優勝回数を増やすこと。メンタルの部分を鍛えて勝負強さをつけていきたいと思っています。
前くみ デビュー時に抱いていた理想は達成できましたか?
桑原 理想って達成できないから理想でしょ?
前くみ なんか深いこと言った。
桑原 でしょ? ここ使ってくださいよ(笑)。理想ってどんどん高くなりますからね。
前くみ ひとつ実現すると、次の理想が現れるわけですね。
平見 理想というか、目標ですかね。ひとつ目標を達成したら、次の目標ができるというか。
前くみ 逆に言えば今まで目標を達成してきたわけですね?
平見 ペースは遅いですけど、少しずつは…。河合クンや桑原クンと比べたらもっとがんばらなきゃって思いますけど。
河合 人と比べるとのは不毛だと思うよ。桑原とも話したよね。
平見 まあ、いい刺激になればいいのかなって。
藤山 最近、チルトを跳ねたり、伸び型の調整をするレーサーが増えたことは、うれしいです。というのは、時代を変えたいという思いがあって、その火付け役になれたから。
 藤山さんの伸びは本当にすごい。藤山さんには教えられてばっかりで、一緒に走る時は脅威です(笑)。
藤山 一緒のレースに組まれたら嫌か?そんなことはないですよ。楽しんでます(笑)。
 僕は嫌です(笑)。自分が内枠の時に藤山さんが外枠にいて一緒に走るのは、まくられる気しかしないです。もしかしたら前付けに来るかもしれないですしね(笑)。
藤山 伸びていたら基本的に主導権を握れるし、僕の外側の方が結果が出るって考えいる人もいてるんで、そういうことを考えて前付けしてますね。2コースの方が絶対にまくれるんで。最近はチルト+0・5度で前付けもしてるんで、何が一番勝てるのかいろいろと勉強中です。
 僕が6号艇で6コース、その時3カドに引いてる藤山さんをまくるっていうのが夢ですね。だって3カドの藤山さんをまくったのって、これまでおらんでしょ(笑)。
藤山 いや、いっぱいおるわ(笑)。
 えっ、もうおらんっていうことにしとってください。僕が人類初になりたいんですよ(笑)。
藤山 まあ伸び負けでまくられたことはないからね。