オフィシャルウェブで得られる情報から、SG出場権争いや年間成績など興味深いデータを発信している人気サイトが「ひまひまデータ」。月刊マクールの連載「ひまひまオフライン」には、さらに一歩踏み込んだデータを提供してくれています。ここでは過去に取り上げたいろいろなテーマを再集計して、最新のデータでお届けします。予想には役立たないかもしれませんが、知ると楽しい、そんなデータです。
*特記ない限り、データはすべて96年以降のものです。
女子戦だけではなく、混合戦で強い女子も要チェック!
十数年前から人気に火がついて、その勢いは現在も衰えない女子戦。開催数も次第に増えており、男女W優勝戦なども含めると今や年間60開催以上。15年ほど前までは30開催ほどだったことを考えると、隔世の感があります。
しかしもちろん、女子レーサーは女子戦だけを走るわけではありません。一般戦の混合戦はもちろん、GⅠの周年記念に斡旋されたり、自ら権利を勝ち取ってプレミアムGⅠやSGに出場するレーサーもいます。表1は96年以降、女子レーサーが出場した混合戦をグレード別に分け、その結果を集計したものです(数字は延べ人数)。
GⅢ以下だと女子レーサーの優勝もかなり多くなりますが、やはりGⅡ以上だとなかなか優勝には至りません。最近では19年のGⅡMB大賞で守屋美穂選手が優勝していますが、GⅠだと13年に平山智加選手が尼崎60周年で優勝したのがいちばん最近のこと。そしてSGでは、優出こそありますが優勝はまだありません。
男女の最低体重差が5㎏と広がったことにより、混合戦でさらに女子が活躍することが期待されます。いつか表のSG優勝欄に名前を刻む女子レーサーが出てくるでしょうか。
表2は混合戦優勝回数の多い女子レーサーです。通算優勝は女子戦を含めた優勝回数です。寺田千恵選手が混合戦の優勝回数でダントツの1位。上位にベテランが多いのは、女子戦がさほど多くなかった時期から走っているためでしょう。今後、寺田選手や日高選手の記録に近付く女子レーサーは誰か、楽しみなところです。
初のA1級昇格維持するのはかなり大変!
多くのレーサーがA級、中でもA1級を目指しているはずです。級別により斡旋されるレース数やグレードが異なり、それが賞金に結びつくのですから。だから初めてA級に昇格すると喜びも格別でしょう。
グラフ1は期ごとに何人が初A級(多くはA2級)、あるいは初A1級になったかを示したものです。98年頃の人数が多くなっていますが、これはA1級の割合が15%から20%に増えたため。それ以外は、増減があるもののだいたい毎期初A級が20人弱、初A1級が10〜15人程度生まれています。
初A1級の中にはA2級を飛ばしていきなりA1級に昇級する特進A1とでも呼べるケースがあります。95年後期以降だと全部で49人いて、22年前期も福岡の柴田直哉選手と広島の實森美祐が特進でA1となりました。
ただ、初めてA1級となったレーサー達には厳しい現実もあります。表3はA1継続状況です(特進除く)。実に45%のレーサーが次の期にA1級から陥落してしまいます。ただし、ここで踏ん張れれば徐々にA1級に残る率が上がっていきます。
特進A1の場合は、過去49人のうち、2期目も継続できたのは10人でした。そしてそのうち大阪の木下翔太選手(15年後期昇級)と小池修平選手(20年後期昇級)のふたりは現在もA1級を継続しています。22年前期の特進A1のふたりはどうなるでしょうか?
現役が長いボートレーサー引退時の年齢で最も多いのは56歳
プロアスリートの中でボートレーサーは現役が長いことで知られます。ではいったい何歳ぐらいで引退するのでしょう? グラフは96年から昨年11月末ごろまでに引退した1459人の引退時の年齢を集計したものです。
平均年齢を計算すると49・3歳。ただこれは結婚などで早くに引退した女子なども含むので、成績や体力の衰えによって引退するレーサーの平均年齢はもう少し高いはずです。実際、グラフでは最も多い引退年齢は56歳。そして56歳以降に引退した選手が全体の30%に達しています。やはりボートレーサーの現役期間はかなり長いのです。
その現役の長さの象徴が、表5のレーサー達です。しかもご存知の通り、年長出走記録ベスト10のうち高塚清一選手と高橋二朗選手は現役です。高塚選手の現役期間にいたってはなんと57年になっています。もちろんふたりともただ走るだけでなく、今でもたびたび1着も記録。驚嘆すべきレーサーなのです。
以前は比較的短かった女子レーサーの現役期間も最近は長くなりました。57歳を超えて走ったことがある女子はすでに過去7人を数え、しかもそのうちの5人は今でも現役です。グレートマザー・日高逸子選手は22年前期はA2級。女子としては史上初の還暦A級レーサーとなります。まだまだ女子戦人気を牽引して欲しいものです。
SGレース初日の華ドリーム出場と優勝の関係は?
SGレース初日の華といえばなんといってもドリーム戦です。十数年前まではその選出や枠番の基準はあいまいでしたが、05年以降は6号艇を除いて選出順位順となっているので、レーサーにとっては名誉でもあるでしょう。シリーズの得点増しにもなるので、メリットも大きいはずです。
表6はSGに出場した際、ドリームに乗る確率が45%以上だったレーサー達です(グランプリ・グランプリシリーズは除く)。1位は引退した植木通彦さん。実に88%超の数字を残していますが、脂が乗りきりSGに出ればドリームは当たり前という時期に引退されているので、この数字になっています。また、最近こそ予選スタートも多い松井繁選手ですが、70%に迫るさすがのドリーム率です。ちなみに植木さんは出場したSGで33連続、松井繁選手は32連続でドリームに乗った記録も残しています。
峰竜太選手、桐生順平選手といった最近のドリーム常連組の名前もあります。特に峰選手は昨年のチャレンジCまで11連続で乗っているので、ドリーム率は今後も上がり続けるはずです。
表7はドリーム組のうち、何人が優出したのかを調べたもので、地の緑はドリーム組から優勝者が出たことを示します。8割以上のSGでドリーム組が優出しており、さらに優勝者の3割以上がドリーム組です。ドリーム組全員が優出したケースはありませんが、いつの日かそんなSGがあるかもしれません。
実はF持ちでも優勝確率は変わらない!?
少し古い話ですが2016年5月のこと。集団Fの一員となってしまった上平真二選手が、その翌節に10連勝の完全優勝を達成したことがあります。F直後の節、さらに期始めの5月でもあったので驚いたものです。
そこで完全優勝への挑戦者にどれくらいF持ちがいて、その達成率はどれくらいかを調べたものが表8。驚いたことに、FなしよりF持ちの方が、完全Vの達成率は高くなっています。おそらくF持ちで完全優勝に挑戦するようなケースは、エンジンが最高に出ているような時ではないでしょうか。
表9はF持ちでの優勝率をグレード別に調べたものです。全グレード平均ではほぼ16%、つまり6分の1です。SGやGⅠこそやや劣りますが、優勝戦の予想ではF持ちでもさほど気にする必要はないことが分かります。
そして表10は、GⅠ以上のレースでF持ちで6回以上優勝した選手のリストです。優勝戦Fの罰則が厳しくなるGⅠやSGでこの実績は、そのレーサーのハートの強さを表しているような気がします。特に西島選手はGⅠ以上で優出した場合、その半数以上がF持ちだったとは。ちなみに西島選手や井口選手は、優勝数のうち4回がSG、今垣選手や井口選手は3回がSGでした。ただ、最近5年ほどは、F持ち優出はあっても、優勝は減っている傾向が見られます。
100日間で何勝できる?無事故で走るのも大切です!
どれくらいのスピードで勝利を重ねていけるかを考えたことがあるでしょうか? 表11は1月1日以降、短期間で100勝に到達したレーサーのリストです。最も早かったのは19年の篠崎元志選手で、6か月とちょっとで100勝に到達しています。この時は10年に勝野竜司選手が打ち立てた年間140勝の記録を抜くことが期待されたのですが、7月以降は記念に斡旋されることが増え、残念ながら年間139勝で終わりました。ちなみにリストのレーサー達は都築正治選手を除いてその年の最多勝利選手賞に輝いています。
ところで1着を増やすにはF休みなどなく走ることも必要です。そこでスタート事故無しに注目したのが表12です。1位の河合三弘選手は6000レース近く、ST事故を起こしていません。実に20年以上に渡る大記録で、奇跡といっても言い過ぎではないでしょう。2000走以上無事故のレーサーがこれほどいることも驚きですが、注目は山崎智也選手です。ベテランファンにとっては01年グランプリ優勝戦Fのイメージが強いはずですが、実はもう10年以上に渡って、Fを切っていないのです。それでいてずっとA1級を維持しているのですから、やはり天才レーサーなのですね。
20代のタイトルホルダー最近は増加傾向にあります!
若手レーサーの伸び悩みが指摘されてもうかなり経ちました。最近でこそ、20歳台のレーサーが記念タイトルを獲ることも増えてきましたが、一時は本当に低迷していました。グラフは20代のタイトルホルダー(GⅠ以上)が何人いたのかを示したものです(その年以前に勝った人を含みます)。その時代の若手レーサーたちの勢いが非常にわかりやすく出ているのではないでしょうか?
88年頃といえば引退した今村豊さんがまだ20代でした。この頃はボートはベテランが強い競技とされ、20代の活躍はさほど多くなかったことが分かります。激変するのは93〜94年頃からです。植木通彦さんが先陣を切り、服部幸男選手や松井繁選手らが出てきて、濱野谷憲吾選手、山崎智也選手、瓜生正義選手などへと続き、さらに銀河系と呼ばれる85期も99年にデビューします。
彼らが20代だったころには、20代タイトルホルダーが14〜15人いるのが当たり前の状況でした。しかしその多くが30代に突入し始めると、GⅠ以上のレースの覇者が減り始めます。18年から19年にかけてはわずか3人という時期もあったほどです。
しかし昨年は、平和島周年の栗城匠選手や浜名湖周年の板橋侑我選手など、20代半ばのレーサーがGⅠで優勝しています。20代の閉塞状況は19年頃で底を打ったのかもしれません。今後は、以前ほどとはいかないまでも、より多くの若手レーサーが台頭してくる可能性があります。それでこそ老若男女のそれぞれが活躍できる、ボートレースのいいところでもあるのでしょうね。