博打は孤独で清潔なもの

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独りになることについて考える。

あ、べつに離婚するとか、そういうことではありません。一人暮らしは好きではない。病院に入るときでも、大部屋のほうが個室より気楽なタイプである。

親の晩年を意識するようになってから、独りになる実感をもつようになった。まあ現実的にはきょうだいもいるし、天涯孤独になるわけではない。それでも、親が自分で決めることができない事柄が増え、かわりに自分が親の人生を左右する選択をするようになると、「他者の保護下をはなれて独り立ちする」雰囲気を感じるのだと思う。これからはなんでも自分で決めていい、ということは、裏を返せばこれからはなんでも自分で決めなければならないということでもある。わたしの苦手な分野だ。思えば、これまで「人の意向に添う」能力ばかり求められてきた人生だった。よほど意識しないと他者や環境の都合に合わせるのが当たり前になる。

渡邊十絲子

渡邊十絲子(わたなべとしこ)。東京都出身。主婦にして詩人。生涯一競艇客という立場を貫き、問答無用に艇界を斬る気鋭の論客でもある。代表著書は詩を読むための手引書「今を生きるための現代詩」(講談社現代新書)、書評集「新書七十五番勝負」(本の雑誌社)など。