記憶の混乱
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記憶が混乱することについて考えている。
予想外の展開ばかりだった家族の病状に振り回されてひと夏が溶けたけれども、振り回されることには慣れもある。舟券を買っても買ってもかすりもしないときの気持ちと似ているからだ。「自分から状況に働きかけられる」感じがまったくしないとき、ああこれは黙ってじっと時が過ぎるのを待つしかないなあと思う。わたしはそれを競艇場でおぼえた。
しかし、記憶が混乱した人付き合い方は方はいまだによくわからない。「当人にとっては疑いようもない事実」に沿って行動していることはわかる。でも、わたしから見たらそれは「記憶違い」であり、「妄想」である。初めは「それは違う、事実はこうである」ということを説明していたけれど、なかなか納得してくれないし、納得してもそれが続かない。
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渡邊十絲子(わたなべとしこ)。東京都出身。主婦にして詩人。生涯一競艇客という立場を貫き、問答無用に艇界を斬る気鋭の論客でもある。代表著書は詩を読むための手引書「今を生きるための現代詩」(講談社現代新書)、書評集「新書七十五番勝負」(本の雑誌社)など。