師匠

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師匠が亡くなった。鈴木志郎康、詩人、87歳。新聞記事的な人生の要約は新聞にまかせて、師匠から教わったことを書く。

まず、書くことへの向き合い方だ。作品を見てもらうと直すべき点を十も二十も指摘してくれて、それに取り組んで直し、途中で投げ出さないようにと教えてくれた。わたしは最初、こてんぱんに直されたものはもう見込みがないので次のものを書いたほうがいいのかと思っていたのだ。でも師匠がとことん直してくれると知ってからは、一つの作品に一カ月も二カ月もかけて取り組むようになった。詩だけでなく何事にも淡白ですぐ距離をおこうとしてしまうわたしが粘り強いタイプになれたのは、師匠の教えによる。

渡邊十絲子

渡邊十絲子(わたなべとしこ)。東京都出身。主婦にして詩人。生涯一競艇客という立場を貫き、問答無用に艇界を斬る気鋭の論客でもある。代表著書は詩を読むための手引書「今を生きるための現代詩」(講談社現代新書)、書評集「新書七十五番勝負」(本の雑誌社)など。