松井繁「あんなもん、整備でも何でもない」SGで大流行したセット交換の真実

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尼崎グランドチャンピオンを優勝した土屋智則(右)とプレゼンターの神尾楓珠さん

今年のSG、記念戦線ではセット交換が大はやりしている。6月の尼崎グランドチャンピオンでは節間24人もの選手がセット交換を行った。ボートレースのエンジンは1年に1度交換されるが、整備用に前回の使用エンジンを何基か取り置いている。そのほとんどが素性の良かったエンジンだ。そのエンジンから部品を取って、ピストン2個、リング4本、シリンダーケースを丸ごと交換することを「セット交換」と呼ぶ。するとエンジンは別物に生まれ変わる。尼崎グラチャンでもセット交換をした選手のほとんどが足の上積みに成功していた。

それにしてもこの数は異常というしかない。なぜ、そこまでセット交換にこだわるのか。ある関係者は前回のエンジンの方が部品の質がいいのではないかと話した。王者・松井繁は「いいエンジンの部品を取ってくるのだから、良くなるのは当たり前」と話す。尼崎グラチャンで使用されたエンジンは4月23日が初おろし。最大でも4節しか使用されておらず、本体整備が解禁されたのも5節目(6月6日初日)からだった。エンジンの素性もはっきりしておらず、我先にとセット交換へ走った気持ちも分かる。毒島誠は2連対率63%のエンジンだったが、初日にセット交換を行っている。

セット交換をして機力がアップするのではあれば、いいことだらけではないか、と思うかもしれない。しかし、セット交換されたエンジンは別物となる。これまでのエンジン気配などのデータがリセットされてしまうのだ。24人も交換してしまうと、エンジン相場はがらっと変わってしまう。ボートレース業界はエンジンの差をはっきりさせて、エンジンで買ってもらおうと努力してきた。しかし、その相場が逆転してしまえば、舟券は買いにくくなる。松井繁は「あんな恥ずかしいことできへん。(良くなることが)分かっててやれる気持ちが分からん。SG用に(いいエンジンを)残す必要なんかない。あんなもん、整備でも何でもない」と一刀両断した。そういう考え方もあるのだなと、記者も目が覚める思いがした。

プライドをかけて戦った王者・松井繁

セット交換の是非はともかくとして、読者においしい情報をお伝えしたい。

藤原邦充

藤原邦充(ふじわらくにみつ)。1974年生まれ、出身は香川県観音寺市。近畿大学を卒業。就職浪人の末、98年に報知新聞入社。芸能社会、中央競馬、ボートレース(1年だけ)、一般スポーツを経て05年から2度目のボートレース担当に。競輪担当になって観音寺競輪を取材することが夢だったが、無念の廃止に。