MVPに輝かなかった名レーサー

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ノーラン・ライアンのドキュメントを観た。27年に及ぶ現役生活で、51ものメジャーリーグ記録を作った伝説の投手だ。中でも不滅と言われているのが、通算奪三振5714個とノーヒットノーラン7回の記録で、それぞれの2位が4875個(ランディ・ジョンソン)と4回(サンディー・コーファックス)と書けば、数字の凄みがよく分かる。

そんなライアンさんだが、MLBの投手にとって最高の栄誉とされる「サイヤング賞」は一度も取っていない。あちらの野球では野手=MVP、投手=サイヤング賞という棲み分けが、かなり明確になっていて、投手がMVPを取るのはレアケース。よほど成績が突出していた時か、野手にこれといった選手がいない場合か。いずれにしろライアンさんは、サイヤング賞がないのだからMVPは当然ない。

決して記者に疎まれていたわけではない。メディアとの対立で受賞を逃した例は何件もあるが、ライアンさんは20世紀終わりの記者投票で、オールタイムベストの右投手に選出されたぐらいの人である。トータルで残した記録は物凄くても、単年の成績にはマイナス要素があったからだ。よく勝ったがよく負けた。三振を取ったが四球も多かった。四球数もまた断トツの歴代1位なのだ。受賞に最も近づいた1973年は、奪三振のシーズン記録を塗り替えて(383個もまた不滅)、ノーヒットノーランを2回して、21勝した一方で16敗した。勝ち数・勝率・防御率で上回った投手が、サイヤング賞に輝いている。三振はこの投手の2倍半も奪っていたのに。

何故かこの手の受賞に恵まれない名選手がいる。プロ野球の「最優秀選手」を見ると、メジャーで活躍する吉田正尚、鈴木誠也といった名前がない。著名な人では清原和博さん、掛布雅之さん、現役では本塁打王6回の中村剛也選手も取っていない。日本ではアメリカと異なり投手が受賞しやすいが、野手でも投手でも優勝チームから選ばれるのがほとんどだ。

ボートレースの「最優秀選手」にも、取っていないのが不思議な選手がいる。