ボートレース若松優勝選手
シャボン玉石けん杯争奪第1回春の選抜大会!!(平成27年3月23日)
ニュージェネの流れ止めたベテラン! 大澤晋司V
1~3枠の若手が注目を集めた一戦だったが、勝ったのはあごヒゲが渋い上州のベテランだった。若松ボートの「シャボン玉石けん杯争奪第1回春の選抜大会!!」が23日に最終日を迎え、12Rで優勝戦が行われた。1、2コースの1号艇と4号艇が1マークを先に回ったがフライング失格。5コースからスピード光るマクリ差しでF艇のすぐ後ろにつけた大澤晋司(40歳=群馬)が先頭に立ち独走ゴール。今年初Vを飾った。決まり手こそ恵まれだが、多くの観衆はこの男の自力ある走りっぷりに拍手を送った。
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罰を受けてレースに戻ってきた男に、今度は勝利の女神が微笑んでいた。
2月GI関東地区選手権を走り終えてからフライング休みに入っていた大澤。今回の若松が久しぶりの実戦だった。初日1走目がコンマ21、2走目がコンマ18。どうしても、復帰1節目だけに今節は鋭いスタートを連発するわけにはいかなかった。足かせは確かにあった。
ただ大澤の乗る36号機はよく噴いた。スタート我慢しても展開は突けるし、その動きは軽快だった。乗り手とモーターがよく合っている印象。きっちりと予選突破、そして準優もさばいて2着確保。ファイナルへの切符も掴み取ってみせた。
優勝戦メンバーの中で、大澤の一節平均スタート順は5番手。対戦相手達の中にはゼロ台連発している選手もいた。対してフライング持ちの大澤。しかも枠番は5。外コース濃厚。さすがにここは不利な要素が多かった。だが、それでも、悲観せず、ベテランらしく慌てず騒がず。最終日も自分のモーターと向き合いながら、調整作業を続ける大澤がいた。外枠でもチャンスが生まれたら、その一瞬を確実に射抜くために。「(昼の)試運転の時は回転合ってなかったけど、夜にはピッタリ合わせることができました」。戦闘準備は整っていた。
V戦本番は進入が乱れていた。スタート展示が124/356。本番が143/256。4号艇中岡正彦が前付けに動いて、それに対して1号艇の山口達也が意地の抵抗。冷静さを欠くような感じで流れ込み、練習と起こし位置が変わってしまっていた。それと、スタート展示ではダッシュのカド位置を取っていた3号艇の河野大は、本番で急に3コースに入り込み、どこか浮き足立つような感じ。2号艇の田中孝明はダッシュ発進に。この若手2人も起こし位置がS展示と大きく変わった。
結局、起こし位置を変えず、動乱を横目にマイペースにスタートに臨めたのは5号艇の大澤と、6号艇の山田雄太の2人だけだった。
流れ込んだ1、2コース両者は痛恨のフライング失格。3、4コースの若手2人はスピードがイマイチ乗れていないスタート。逆に、5コースの大澤は勢い良くスタートを切ってグイッとのぞいていく。F艇以外ではトップから2番手という好スタートでもあった。そうして、センター2人の外を豪快な旋回でブン回して、イン先マイした山口の後ろにきっちりつける。山口はFなのでコースから消える。黄色カポックの前が一気に開ける。大澤が先頭に。スポットライトはこの男に向いた。
1周2マークは内から河野が急角度で突っ込んできていたが、経験が違う。絶妙な全速ターンを繰り出して交わす。「他のどの人より調整は合っていたと思います。いいエンジンでした」。抜群に仕上がっていた相棒機。足元をすくわれたり、抜かれるはずはない。勝負アリ! あとは一人旅。「スタートは無理せず、優勝したい」。そう戦前に語っていたが、まさにその通り。心地良さそうに、ゴールラインを駆け抜けていったのだった。これが今年最初のVとなった。
ウィニングランは多くの観衆の前で楽しんだ。表情は柔らかかった。「(F事故レース後だが)あんなにお客さんがいるとは思わなかったですね。手を振ってくれて嬉しかったです」と大澤。それは優勝戦の彼の走りに魅了された人が多かった証でもあった。
F休みで走れない期間もあったが、それも消化。いきなり優勝も飾り、リズム良く次走は大村一般戦へ向かう。「走れることに感謝して、1走1走頑張りたいと思います」。40歳。不惑。今、艇界話題のニュージェネレーションのように大きな野望などは語らない。だが、渋く1つの仕事をこなして帰るこんなベテランも、また格好良かった。
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(文:吉川)