ボートレース若松優勝選手
平成25年5月16日
GI全日本覇者決定戦開設61周年記念競走
JIN! 若松周年 第61代チャンプは齋藤 仁!
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乗り越えてみせた。
連日変わる気温にも一生懸命に調整した。予選道中の激しい着取り合戦の中でも冷静にポイントをまとめて舟券にも貢献し続けた。強豪集まる中で予選3位通過は見事。準優はプレッシャーのかかる1号艇だったが、それもはねのけてきっちりイン逃走1着。優勝への壁を次々と越えていった。そして、優勝戦も他艇の事故に巻き込まれることなく、必死に走り切った。それが今節の齋藤である。堂々の軌跡である。
優勝戦当日、昼一でピットに入って最初に目にしたのは、秋山直之らと談笑する齋藤の姿だった。肩ひじ張っていなくていい雰囲気と思った。優勝戦メンバー握手会では、一般客に混じって池田浩二らに握手を求めるボケを見せて観客の笑いも取っていた。その後、ピットでモーター調整を続けながらも、たまに笑みを見せた。「いい同期、いい先輩後輩のおかげで、リラックスして優勝戦まで向かえたと思います」。
ただ、レース直後のヒーローに笑顔は全くなかった。
1周目バックストレッチで、1号艇の前田将太と、5号艇の吉田弘文が接触して直線で転覆する大アクシデント。艇が破損。彼らのすぐ後方につけていた齋藤は、この危ない事故を一番近くで目撃。これで自分自身がGI優勝戦の先頭に立つことになったわけであるが、だがそれよりも「2人はどうなった? ケガは? 状態は?」と心配し続けていた。「選手にとって、事故は他人ごとではないですからね……。僕も明日は我が身と思って走っていますし」。レース中の彼の心に、喜びという感情はとてもじゃないが沸いてこなかった。だから、関係者からのウィニングランの要請も躊躇した。眉をひそめて困ってしまっていた。ただ、ファンは素直に待っていた。齋藤はボートを出した。「水面際でお客さんがいて、手を振ってくれるのはよく見えました。遅い時間まで残っていただいて、それは本当にありがたいことでした」。その優しい祝福の声援に応えてからピットに帰還。そこで前田と吉田が一人で歩ける状態、大きな外傷は負っていないことを知り、ようやく安堵した。
そして表彰式のステージで、多くの観客に祝われて、少し笑顔が戻っていた。「内容が内容ですから素直には喜べませんが、結果は受け止めようと思います」。
齋藤は礼儀正しくて真面目な選手である。事故レースに対しても人一倍真剣。そんな彼に贈られる拍手は温かく、そしてウィナーを称えていた。若松61代覇者、齋藤仁。文句なし。「このVに驕ることなく、これからも1走1走をしっかりと走りたいです」。最後はしっかりとファンに誓っていた。
昨年5月に桐生周年でGI初戴冠。そして、今年春のSG総理大臣杯で優勝戦進出とここ数か月で大躍進。「申し分ないリズム」という近況は、3月から今まで8節連続で準優進出、その内6優出と目を見張る活躍を続けている。「旬な選手」、「脂がのってきた」などの言葉も、他の記者の方々から聞こえきている。
「今年の目標は2012年の齋藤 仁を越えていくことです」
若松から帰路につく寸前に、そんなことを言ってくれた。今の彼にはその勢いが十分ある。去年はGIを1つ獲ったが、今年もそれに並んだ。さらに2つ3つと伸ばしていくだろう。来月はキングオブSGのグランドチャンピオン決定戦の出場も決まっている。今年は去年より激しい戦いに身を置くことになるが、それでもどんな試練も、齋藤は乗り越えていくだけだ。