日刊編集後記


2013/9/19

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昨日、JR東海がリニア中央新幹線の計画を発表した。仕事柄、出張は多いし、個人的にも鉄道好きの方だと思うが、しかし今回発表された概案は首を傾げることだらけだ。品川から、基本的には昔の中山道に沿い、山梨・長野・岐阜県を通って名古屋まで最短で40分で行けるようになるとか。技術的にはとっくの昔に設置可能だったのだが、様々な障害があってこれまで実現に至らなかった。

外国では例えば、上海の国際空港から市内まで、既に使用されている。東京オリンピック招致が決まって、日本国内が浮かれた時を狙っての発表とさえ思える。問題はこれからの工期と費用で、来年着工して名古屋までが27年に完成予定、さらに45年までに大阪まで伸ばすとか。大阪までは32年先なので、私が生きてこの路線を見られるかとなると難しい。

工事費は9兆円かかるが、開業後50年の経済効果は11兆円近くにのぼるとの数字も…。発生する電磁波や膨大な電力消費量を理由に反対する市民団体もあるようだが、何より、私には無用の長物としか思えない。工事費はJR東海の自己負担となっているが、それってまず、現在の利用者である我々の負担増を意味している。

新幹線はもちろん、在来線だって値上げしてくるだろう。なおリニア全路線の86%はトンネルで、景色はほぼ何も見えないらしい。なぜならかなり多くの場所で地下40m以下に線路を敷くから。地下40m以下なら、地上の用地取得や地権者への補償が必要ないからだそうだ。

要するに“早い地下鉄”で、仕事一本のビジネスマンはともかく、旅情などとは無縁だろう。既に安い価格の飛行機便もたくさん飛んでいるし、14年先に名古屋、32年先に大阪へ行くことに、どれほどのニーズがあるだろうか。あと7年後には人口が確実に減っていくこの日本で、将来への“負の遺産”だけは残さないようにしておくべきだと思うのだが…。

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from ヤマケイ

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