日刊編集後記
2012/12/25
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山田風太郎の甲賀忍法帖という作品は、1958年に面白倶楽部という雑誌で連載が始まったものです。ワタシが57年生まれですから、もう半世紀以上も前に書かれた作品ということですね。これを読んで熱中したのは最初は中学生くらいだったと思います。以降、忍法帖シリーズはすべて読みましたが、甲賀忍法帖は通算10回以上読んでいるでしょう。シリーズ中、個人的にAランクと思っているのは、他では風来忍法帖、おぼろ忍法帖(魔界転生)、忍法剣士伝あたりですね。柳生忍法帖はミステリとして超絶ですが、ちょっと自分的には描写がつらいところもあるので。けっこうマイナーだけど自来也忍法帖も清々しくて好きですね。
そんな昔の作品にインスパイアされた人たちが今でもこんなにたくさんいるというのが、嬉しいですよ。中島らもさんが風太郎忍法帖に大きく影響されたというのは生前よく書かれていたことです。せがわまさきのバジリスクは素晴らしい解釈で漫画化されていると思います。原作も名作ですが漫画の方も名作です、間違いなく。アニメの主題歌を担当した陰陽座は、それ以前から忍法帖シリーズの曲が多くあり、やはり大きな影響を受けているのでしょう。甲賀忍法帖という作品は、基本的に切ない話です。無念のまま忍者達が次々に倒れていく。何度読んでも泣きます。でも、風待将監も地虫十兵衛も蛍火も陽炎も、みんな死んではいなかった! 読んだ人の胸の中で生きていたんですね。現代の優れた表現者たちが、彼らを甦らせてくれた! そのことがじんわりと心を震わせるんです。そんな気持ちで、パチスロのバジリスクを打っているんです。
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