ボートレース若松優勝選手


王冠過去の優勝選手

ニッカン・コム杯(平成28年11月26日)

田中信一郎 圧逃V


3556 田中信一郎(大阪)

1強だった。若松ボートの「ニッカン・コム杯」は26日に優勝戦が行われた。1号艇の田中信一郎 (43歳=大阪)が1コースからトップスタートを決めて1マークを先制。誰1人として近づけないインモンキーを決めて首位快走。今年5回目のVを飾った。実績も、さばきの腕も、田中が突き抜けていた今節。主役がきっちりと期待に応えた。
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マクって、マクリ差して、逃げて、白星を並べまくった。

SGの裏開催の一般戦だった今節。全体的に薄いメンバー構成。その中に賞金王を3度制覇の田中が入っている。どうみても役者が違った。

もちろん、シリーズを先頭で突っ走った。初日から準優勝戦まで終えて10戦8勝。グイグイと白星を掴み取っていった。

ただ、コース取りはおとなしかった。とにかく動かない。内側に動けば余裕で入れてくれそうな対戦相手達の組み合わせでも、そうはしなかった。自分が不利な外めの枠になったレースは、その枠番通りのコースから発進した。4号艇なら4コース、5号艇なら5コースから。それでも、マクリ差しやマクリで勝ってしまう。手がつけられなかった。強い。

予選トップで獲得した準優1号艇も、1人だけ難なく逃げ勝った。他の2人の準優1号艇だった20代の選手は1着を取りこぼしていた。そのあたり、田中との勝負強さの違いも目立った。

優勝戦は無論、絶好枠1号艇が用意された。鬼に金棒である。

もう、有無を言わさず、あっという間に決着した。雨が降りしきる中で、決していいコンディションではなかったが、インからコンマ12のトップスタートを切った田中。1マークを素早く先マイ。陰をも踏ませぬイン逃走でバック直線へ抜け、あっさりと単独先頭。後続を離して、勝利を決定づけ、あとは悠々と周回を重ねフィニッシュラインを通過。今年5回目の優勝を飾った。

レース後、「今節はいいエンジンを引けた。若松は大好き。優勝できて嬉しい」と語った。

当地での優勝は意外にも初だった。「若松は1号艇で飛んだことがある」と言っていた。たしかに、前回3月は優勝戦1号艇でインだったが、2コースに構えた巧腕・上平真二の直マクリに屈した。そのレースも同じ雨だった。だからこそ、2度の失敗はしない。あの時のリベンジを今回果たした。

表彰式を終えると、田中は足早に帰路へ。ここで、外に出るとさっきまでの雨は上がり、星空でも広がっていたなら小説のようだったが、雨は依然止まなかった。上空には厚い雲が漂っていた。

それはまるで、心の底から笑えない田中の現状のようですらあった。この男にとって2016年は、不完全燃焼であっただろう。7月のオーシャンカップ準優勝戦であまりに痛いフライング。罰則でその後は一般戦回り。SGやGIなど、グレードの高い舞台から姿を完全に消した。メモリアル、ダービー、チャレンジカップ……。それで今節の若松一般戦に来たわけである。

チャレンジカップは、同郷後輩で今年爆発の石野貴之の優勝(SGを2V! 賞金ランキング1位)で閉幕したが、田中は賞金ランキング19位。一般戦回りでも賞金を稼いだが、SGグランプリに出場出来る18位以内には、惜しくもあと一歩、届かなかった(11月27日時点)。

悔しさは計り知れない。

ただ、もう、ファンは田中の今後の反撃に期待するしかない。来年1月、下関周年からGI戦に復帰する。雲をかき消して、巻き返しの1年になるか。注目したい。

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(文:吉川)


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