ボートレース若松優勝選手


王冠過去の優勝選手

平成24年4月29日
スポーツニッポン杯争奪GW特選競走

若松3連覇達成! 吉田弘文がGW戦制す


3899 吉田弘文(福岡)

ゴールデンウィークに盛り上がる4月最後の日曜日。穏やかな陽気とは反対に、昼開催のレース場では、波乱の優勝戦が目立った一日であった。下関のGI名人戦では、人気中心だった1号艇の山室展弘が負け、博多では完全Vに王手をかけていた1号艇の白井英治が無残に散っていた。そんな中迎えたナイター若松の優勝戦。ポールポジションの白い勝負服に袖を通したのは、吉田弘文だった。

今節は、全国で一早く始まったGW競走。お互いの手の内をよく知る者同士が、しのぎを削っていた。

その中で、吉田は9.33という高い得点率で予選を1位突破。そのまま準優もインから押し切り1着。優勝戦1号艇を掴んだのである。

前走地の戸田でも、吉田はV戦1号艇を勝ち取っていたが、佐賀の松江秀徳の2コース直マクリを喰らって敗れていた。リベンジの機会は整った。

時計の針が20時40分すぎをさした頃、高らかなファンファーレとともに6艇がピットアウト。スタート展示から動く気配を見せていた6号艇・岩崎正哉の動向は気になったが、岩崎の前付けは3コースまで。1コースは吉田がしっかりと確保し、2コースには大神康司が陣取った。この吉田と、大神。ともに若松勝率が8.00を超える若松好相性の2人だった。

注目のスリット。インの吉田はコンマ19のスタートだった。本人は「コンマ10前後くらいのスタートと思ったけど」と首を傾げる。それでも、2コースの大神もコンマ18で、壁役は十分。狙うはイン先制。

ただ、センター4コースから威勢のいい西山貴浩が若干のぞいてくる。5コースの青木幸太郎もいい。吉田は、これら若手後輩の迎撃に意識をとられてしまっていた。レバーを握る左手にいつもより余分に力が入る。そして1周1マーク。吉田のイン先マイは、舟のサイドがきっちりとかからず、外側にふくらみ過ぎだった。「マクリを牽制して、ターンミスしました」。

この展開を見逃さないのが、吉田の隣の大神だった。シャープな差しハンドルで、吉田をグサリ。しっかりと差しを突き刺して、バックストレッチでは完全に吉田を捕まえていた。そして、2マークを有利に先マイ態勢へ。大神が優勝に片手をかける。若松の優勝戦も1番人気の1号艇が負けるのか。またしても本命党は涙をのむのか……。

しかし、そんな思いは2マークで霧散。吉田の執念に驚かされた。

2マークを先マイする大神の懐へ、照準を合わせた吉田。突っ込んできた岩崎をかわしながら、間一髪の差し返しを入れたのだ! これが目が覚めるくらいド迫力で、絶妙で、素晴らしかった。この差し技で、完全に形勢逆転。勝負は決した。「舟足は僕のほうが良かったから、2マークは差そうかマクろうか考えていた」と冷静に振り返った吉田。良い舟足、落ち着いた判断が、最高の逆転劇を生んだのだった。

予選道中、吉田はなかなか実力以上のターンができないと不満をもらしていた。ターンする時に重そうにしている瞬間もあった。それが、この大一番で「実力以上の差しができましたね」と目を細めた。さすが地元A1級のスター選手である。

「今節は毎日落ち着いていて、充実していた。こんな一節は、これまでになかった」

現行の選手持ちプロペラ制度では最後となったこのシリーズ。そんな節目で、充実の6日間。最高の区切りになったと思う。

これで若松は3連続優勝。これから、吉田が若松に来れば今以上に目が離せない存在である。

「若松の地元スターにしてください」。そんな冗談で関係者の笑いも誘ってみせた吉田。持ちペラ制度が終わっても、彼のパフォーマンスに陰りがでてくるとは思いにくい。

次走も、優勝戦1号艇に乗って、優勝を掴み取りにいくだけだ。


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