ボートレース若松優勝選手
平成24年3月29日
シャボン玉石けん杯GⅡモーターボート大賞
やったぜ! 石野貴之が準パーフェクトV
「たまに外から穴を開けるので、買ってください」
シャボン玉石けん杯GIIモーターボート大賞 初日DR戦。石野はインタビューでそう語っていた。すると、本番はまさにその通り。大外から発進した緑の勝負服の石野は、鮮やかすぎるマクリ差しで艇団を切り裂いたのだ。2着に松井繁、3着に山崎智也を引き連れてゴール。穴党にとって嬉しい3連単万舟券を提供したのであった。今考えると、今節、石野が勝って万券が出たのは、この1回。最初で最後の貴重な“人気薄・石野”がいたドリーム戦だった。
石野が5、6コースから突き抜ける節は、乗れているサインである。もちろん優勝戦線に躍り出てくる。
初日の外枠2走をW白星で気持ちよく滑り出した石野は、その後も快調に飛ばしていた。逃げて良し、マクって良し。星を重ねる。シリーズ3日目までは、地元の瓜生正義が石野の独走を許すまじと得点率で並走する石・瓜時代。だが、瓜生は4日目に失速。そこで石野が突き放し、予選トップの座はがっちりと確保してみせた。
舟足は抜群。愛機49号機には絶大な信頼をよせていた。「行き足、出足がかなりいい」。ターンを回れば、出口でグッと前に出ていく足は素晴らしかった。
1号艇で出陣した準優勝戦も、インから1マークを先に回ると、2コースから差してきた名手・松井を抑えて白星奪取。今シリーズは1着6本、2着1本、オール2連対の大活躍で、優勝戦の1号艇=ポールポジションをゲットしたのだった。
最高級の手応え、流れで迎えたV戦。強引な前付けに来る選手も不在で、石野はインにしっかり入る。あとはスタート決めて逃げるだけだが、そのスタートが少々ヒヤリとした。タイミングはコンマ05。剃刀のような切れ味だった。「早いと思ってちょっと放りました。放って良かった」と胸を撫で下ろす。3~6コースも全員気合いのゼロ台をぶち込んできており、スリットから各選手の闘志を感じた。ただ、それでも、それらを迎え撃つ石野は決して負けない。スリットがほぼ横並びなら、インから高速インモンキーを敢行する。少しのターン漏れはあったが、そこは出足でカバー。他選手のマクリも差しも許さない。先マイ決めて、バックストレッチに先頭で抜け出ると、もはや敵はいなかった。見えるのは、目の前に誰もいない視界良好なVロード。あとは優勝へ一直線。3周を快走し、独走でゴールイン。並居る強豪メンバーを抑えた約1年2ヶ月ぶりの美酒は、格別だったはずである。
「感激です! 1年ぶりの優勝はかなり嬉しいですね」。戦い終えたウィナーは目尻を下げ、その余韻に浸った。勝者の凱旋・ウィニングランも、スローペースで丁寧に行い、ファンと喜びを分かち合った。
今節は石野の調整力、対応力も光った6日間だったと思う。シリーズ序盤は風速10m近い強風が吹き、中盤からは急激な気温の上下が各選手を苦しめていた。そんな中でも、石野はしっかりと着を落とさなかったのが見事。強風も荒波も気温も、石野の進撃を止めることなどできなかったのである。「コンディションが徐々に変化していく中で、しっかり自分で対応できた。良い経験になった」と振り返る。今節は自信にも繋がるだろう。
前期F2本で、近況は調子が上がらなかった石野だが、今回の若松で完全に目覚めたと感じる。現在勝率5点台で甘んじるような選手ではないし、今節は本来の実力を証明してみせた。さぁ、リズムアップして、来月は大村のGI戦に出陣する予定だ。
外から穴も開けるし、インからもしっかり人気に応える。それがSGタイトルホルダー・石野貴之。きっとまた、大きな一撃を決める男である。