ボートレース若松優勝選手


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平成24年3月8日
GⅢ2012新鋭リーグ戦競走第3戦植木通彦フェニックスカップ

備前にニューヒーローだ! 末永由楽が初V!

写真
4441 末永由楽(岡山)

結果が出ない時期は苦い。

末永由楽にとって、待ち望んだ嬉しい初優勝。そこに至るまで、彼なりに苦しみがあった。

末永は、今年5月でデビュー5年目を迎える100期生。同期には、今年1月のGI新鋭王座決定戦を優勝した松尾昂明、全国スター候補に選ばれた桐生順平、人気女子レーサー・鎌倉涼らがいる。ただ、そんな彼らより、デビュー当時は末永のほうが印象的だった。彼は、デビュー戦(児島)で水神祭を挙げると、続く2走目も見事に1着。そして、デビュー節で準優へ進出。100期生の中で準優を経験したのは末永が1番。"児島で新人旋風"という言葉が聞かれるほどだった。

しかし、そこから末永は上手く羽ばたくことができなかった。勝率が思うように伸びない。優出できない。そうして末永がもがいている間に、同期の松尾が初優勝。さらに100期以降に光るモノを持った後輩選手が次々と出現。山田康二、前田将太、後藤翔之、深谷知博、磯部誠。続々と出てくる逸材。末永の自信は欠けていき、存在感は小さくなっていった。

だが、転機が訪れた。

それが、若松で行われたこの新鋭リーグ第3戦だった。好素性機を引き、「回り足が最高にいいです!」とターン回りに太鼓判。末永は早いスタートをバシバシ決める選手ではないので、差して接戦に持ち込むことも多い。そういう時にこの相棒は存分に力を発揮してくれた。

準優は、2コースからインの前田を差し切り1着。前田が少々焦ってターンをしたのだが、それでも前田を差し切るのだから末永のハンドルと機力は評価できた。

そして優勝戦。末永は3号艇に乗艇。大一番はさすがに実力者揃いだった。1号艇には当地3連続優勝を狙う水摩敦。2号艇には、もはや新鋭の枠に収まらない茅原悠紀。4号艇に前田。5号艇に後藤翔之。6号艇に山田。「初日ドリーム戦みたいなメンバーが相手ですよね」と末永が漏らした。たしかに難敵ばかり。「ただ、気持ちだけは負けないようにしようと思っていました」と、自身を奮い立たせ、最終決戦に挑んだ。

枠なり123/456で発進したスタートは、デコボコだった。奇数の1、3、5号艇が好スタートで飛び出す形。1マークはインの水摩が先マイ体勢へ。そこに、後手を踏んだ2コースの茅原がムリ気味にでも握っていく。さすがにこのマクリは届かなかった。だが、水摩のイン先マイに異変。外側へと流れ気味。「握りこむのが早過ぎました……」。優勝へ向けて、はやる気持ち、1番人気の重圧。それらが、水摩にいつもの旋回をさせなかった。ブイ際が空く。そこだ。1、2コースが握り合うこの展開を、3コースの末永は見逃さなかった。差しハンドルで切り込む。末永の艇が、ターンでグッと前に出ていった。バックストレッチでは、内に末永、真ん中に後藤、外側に水摩。2マークは、内有利に末永が先マイ。渾身のターンでライバル達にリード。そのまま無我夢中でトップを守りきり、歓喜の優勝ゴールへと飛び込んだ。

「実は、昨日の夜、ほとんど眠れませんでした。ずっと悩んだり、イメージトレーニングをしてたら朝の4時まで起きてました……」。悩んだ結果、末永が出した結論は、とにかく"展開を突く"だった。「1マークは、2号艇が握っていくのがよく見えたので、差しに切り替えました」。まさに、冷静に展開を突いた判断。前日夜の悩みは決して無駄ではなかった。

「初優勝までが長かったから、最高に嬉しいです!」

ピットに戻ってきた末永は、本当に本当に嬉しそうだった。同県の茅原や同期の松尾らによって、初優勝水神祭も行われた。寒空の下、夜の若松水面に2度落とされ、選手や関係者から祝福された。「(今回の優勝は)かなり自信になりました! これからも頑張ります」。最後は言葉に力を込め、意気揚々と若松を後にした末永。末永の好きな酒が、この日は何倍にも美味しかっただろう。

結果が出ない時期は苦い。だが、その実は甘い。


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