ボートレース若松優勝選手


王冠過去の優勝選手

平成25年10月14日
ていゆうニュース杯アダムスキーカップ

1度も負けず、真の優勝! 伏兵・中村真がやってやったぜ完全V!

3616 中村真(福岡)

若松ボートの「ていゆうニュース杯アダムスキーカップ」は14日、最終12Rで優勝戦が行われ、1号艇の中村真(40歳=福岡)が2マーク差し返しから渡邉英児らを振り切って優勝ゴール。初日から土つかず破竹の6連勝で、自身初の完全優勝達成。若松でデビューして約20年。待ち焦がれた当地初Vは、ドラマチックで、記録にも記憶にも残るものとなった。

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男は40歳から!? 今年2月に40歳を迎えた中村真が、初めての完全優勝。今年は2回目の優勝を飾った。

初日から土つかず。マクリ差し、逃げ、抜き。多彩な技で1着をズラリ並べ、他の強豪達を抑えて優勝戦1号艇を掴んだ。前走の桐生では大苦戦して準優どころでもなかったが、今節は好パワーのエンジンにも後押しされ、レースにキレがあった。

ただ、さすがにパーフェクトVの壁を越えるのは苦労した。

渡邉英児、重成一人、池本輝明など、V戦に顔をそろえた記念常連、実力者、曲者たち。初日から機力でリードしていた中村だったが、対戦相手も確実に機力を上昇させてきていた。「最終日のスタート練習では相手を出し抜くことができませんでしたね。皆同じくらいでした」。機力有利……とは簡単に言えなくなっていた状況だった。それならば、インからスタートだけは遅れてはならない。スタート勘は掴まなければ。優勝戦前の中村は、それだけを考えて練習を繰り返した。完全優勝のことはあまり考えないようにして、冷静さも保つようにも心がけた。

ところが、レースではスタート前にいきなり平常心を奪われた。まさかのピットアウト失敗。「ピットを出る寸前にモーターの回転が落ちたんですよ。あれは慌てました」。すぐに2号艇の渡邉英児に締められ、冷や汗を流した。もしインを奪われたら万事休すところだ。それだけはならならいと、中村は必死にインを死守した。

そんな中村に、まだまだ試練が訪れる。スリットラインは6艇がほぼ横一線。懸念していたスタートで遅れることはなかった。が、安心する間もなく、1マークは強敵たちが襲いかかってきた。インから先マイ目指す中村に対し、センターから3号艇の重成が赤い炎となって全速で握って攻めれば、2号艇の渡邉は漆黒の闇の中で鋭いハンドルを中村の懐へ突き差す。中村のイン先マイは膨らみ過ぎて、渡邉の差しを許してしまった。「(重成の)エンジン音が聞こえて、つい握り過ぎてしまって。これは完全にやっちゃったと思いました」。中村は苦笑した。巧腕渡邉につかまり、バック直線では並走。一気に窮地に陥った。

しかし、まだ中村にラストチャンスが残されていた。バック直線で最内を伸ばしてきた4号艇富田秀幸が、最短距離を通って2マークへ急接近。富田に先マイさせたくない渡辺は、早めに2マークに寄せていく。旋回半径に余裕はない。ターンに入る速度も速すぎた。これでは、外側に大きく艇がハネる。

逆転の一手だ。この展開を見ていた中村が、渾身の差しハンドルを切った。富田を交わしつつ、外に飛んでいった渡邉の内側へ艇を突き刺す。手に汗握る会心のターンだった。見事だった。完全に渡邉を捕まえ、ホームストレッチでは並走。そして2周1マークを先マイ。外側から渡邉が握ってきたが、中村はターンを外さずにきっちり旋回。ここで相手が圏外に流れていき、勝負アリ。軍配は中村。何度も何度も危機が訪れたが、懸命に懸命に走り抜いた男が、完全優勝のゴールイン。地元若松で待望の優勝が完全Vという嬉しさ2倍の勝利となった。

2着に渡邉、3着に重成が入って、3連単配当は910円。終わってみれば1番人気決着。だが、中村の頭舟券を買っていた人は、相当にヒヤヒヤさせられる一戦だっただろう。それだけに、きっといつまでも記憶に残る、そんなレースでもあったと思う。バリバリのA1級達の攻撃に翻弄されながらも、A2級の中村がパーフェクトV――。ドラマチックだった。

中村に完全Vの味を聞くと、「考えないようにしていたので……」と実感が沸かないようで照れくさそうに笑った。まだ激闘を終えたばかり。大仕事をやってのけた感覚は、これからじわじわと感じるのだろう。

30代前半のころはA1級を維持した男。GIにも呼ばれた。近年は勝率5点台に甘んじているが、本来の力はまだある。このパーフェクトVで大きな実績がついた。観客、関係者、周囲の評価も変化してくるだろう。

「この(完全)優勝は、自分にとって何かいいきっかけにはしたいですね。良い分岐点? そうですね。(何年後かに)振り返った時に、そうなっていれば。まずは、これからも一戦一戦大事に一等を狙っていきたいと思います」

最高のスタートを切った40代。迷いなく、目の前の1つ1つのレースに真摯に向かう。今、そんな中村が歩み始めている。


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