ボートレース若松優勝選手
平成25年1月27日
GI第59回九州地区選手権競走
今井貴士が九州地区を制してGI初V! さぁ、ここから駆け上がる!
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激戦を制してピットに帰ってきた今井に、次々と多くの選手が駆け寄ってきた。
まず同期の岡崎恭裕が笑顔で迎える。後輩の水摩敦らが嬉しそうに飛びつく。兄貴格の川上剛や三井所尊春などもイジりながら祝福の言葉をかける。選手代表の藤丸光一とは握手を交わす。そして最後に、優勝戦を共に戦った峰竜太と抱き合った。
この峰の果敢な1マークの仕掛けは、今井にとって大きかった。進入は枠なり3対3で、4コースからコンマ06のスタートを切った峰と、5コースからコンマ05のスタートの今井。両者鋭く踏み込んだ。まず、峰が内艇3艇をマクっていく。先制攻撃を放つ。しかし、インの長溝一生が意地の抵抗。後輩に叩かれてたまるかと、弾きにいく。無情にも流れる2人。この瞬間を、今井は逃さなかった。これも想定の範囲内だったのだろう。「展開は考えていた」と冷静に、値千金のマクリ差しを突き刺す。これが見事。1マークを勢いよく抜け出した。2コースの篠崎元志も体勢を立て直して差してきたものの、バック直線で今井が引きちぎる。自身が絶賛する伸び足が噴き上がった。そして2マークを先頭ターン。ここで勝負アリ。
鮮やかに抜け出した黄色のカポックは、沸き上がる歓声とあちこちで聞こえる拍手の中、歓喜のゴールラインを駆け抜けていった。
「1マークは舟がちょっと浮いてしまったけど、差さってくれと思いながらいきました。若松で育ててもらったし最高です。デビューしていろいろあったけど、今日が一番嬉しいです!」。今井は笑顔いっぱいで、喜びの言葉を並べた。
2004年に若松でプロ初出走。同期の岡崎と共に、有望株として周囲の期待を集めた選手。ただ、順調にA級には上がったものの、大舞台で結果を残せなかった。GI新鋭王座では常に各メディアから優勝候補筆頭に挙げられながらも、ここ一番で取りこぼした。そうしているうちに、岡崎がSG笹川賞を優勝。大きく飛躍。差をつけられてしまっていた。しかも、前期はA2級に陥落。調子を崩して、SG・GIに出る機会さえ失った。
だがそれでも、今期の今井は気落ちするどころか、気合いが入っていた。昨年11月からの勝率は7.00で、現在5連続優出中。そして今回の優勝でGIウィナーの仲間入り。V字型の復活劇で、約2ヶ月後のSG総理大臣杯の出場権をも掴み取ってみせたのだった。
もともと高いポテンシャルがある。そこに、このGI優勝で箔(はく)がついた。自信になる。不死鳥・植木通彦を輩出した若松から、同じように羽ばたく時がきた。
「SGで優勝したい。もっと上にいきたいです」
高らかに目標を掲げ、充実の表情をにじませる男に、もう以前の勝負弱さは感じられなかった。あとは、駆け上るだけ。さぁ、ここから今井の快進撃が始まる。
~今井貴士の1周タイム~
今大会から、若松では展示航走の1周タイムを計測して公開を始めた。全国で初となるレーザー自動測定となる1周タイムだけに、話題を集めている。
そこで、優勝した今井の一節間(全8走)のタイム順位を調べると、2,2,4,2,5,1,1,1。後半3走はトップタイムで、エンジンパワー揃う優勝戦メンバーの中でも、1人だけ35秒台の好タイムを叩き出して1位となっていた。本人の機力コメントも良く、優勝戦は素直に1周タイムを舟券に直結させた人もいるだろう。