ボートレース若松優勝選手


王冠過去の優勝選手

平成24年12月29日
第30回日本財団会長杯争奪クリスマスナイター

師走の大激戦を制し、岡本猛が約10年ぶりのV!


岡本猛(大阪)

穴党ファンに万舟券のプレゼントを運んできたのは、青色のサンタだった――。若松ボートの年末恒例「クリスマスナイター」が29日、最終日を迎えた。注目の優勝戦は、5コースから発進した4号艇・岡本猛(39歳=大阪)が、山口達也や松元弥佑紀との大接戦を制し、2002年以来のVゴール。久しぶりの美酒に酔いしれた。断トツ1番人気の山口は2着に敗れ、3着には松元が入り、3連単は20,120円の高配当決着となった。

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「スタートがなければ、ボートはもっと面白いんやけどねぇ」

今節の3日目。スタート勘が掴めずにいた岡本が、そんなことをぼやいていた。そして、フライングへの不安を口にしていた。

それでも、予選道中は上手く星をまとめあげて得点3位通過。準優1号艇の座を獲得。しかし、その大事なイン戦でスタート失敗。1着を取れる場面で2着に敗れてしまっていた。

優勝戦は4号艇に乗艇。スタート展示では、5号艇の松元や、6号艇の中村真が前付けに動いたために、押し出されて単騎の6コースになった岡本。当然というべきか、彼のオッズは高配当がズラリと並んでいた。

ただ、これで評価を下げるのは間違い。今節の岡本は、ダッシュのスタートに限ればよく切れていた。それも日を追うごとに良くなっていた。特に5コースには3回入ったが、コンマ16、09、05と好スタート連発。平均タイミングコンマ10。目を見張るほど、キレ味鋭かった。

そんな岡本に、大一番で待望の5コースが巡ってきた。スタ展では内に動いていた5号艇が、本番は大外に出て、進入は1236/45に変わったのだ。「単騎でもよかったけど、松元君が引いてくれた。5コースはちょうどいいなと思った」。絶好のカド位置をゲット。岡本は燃えた。そして、決めたスタートはコンマ05! 快心の電撃ショットをぶち込んだのだ。「スタートさえなければ~」と弱気発言していた男とは思えない弾丸S。しかも、スロー勢は甘いスタートで、隊形は中ヘコみ。こうなれば、岡本が内を一掃して1マークを先制ターン。圧倒。これで決まり――。きっと誰しもがまずそう思った。

だが、このV戦はそれだけでケリがつくほど簡単なものではなかった。1マークを我先に旋回する岡本だったが、焦ってしまい操縦ミス。懐を空けてしまう。これを逃すものかと、圧倒的1番人気の山口が、インから渾身の小回り旋回で立て直す。1度はマクられても、この山口という男は簡単に屈しない。さらに、岡本マークの6コースから、くせ者・松元もマクリ差しで切り込んできた。役者は揃った。3艇の争いが開戦。

バックストレッチでは、岡本が一番外側で少しだけリードしたが、内から山口がゴリゴリと艇先を入れてこじあけようとしてくる。さらに、松元は艇を大外に振って、戦況を見極めるべく目を光らせる。岡本は強敵に囲まれた。「もうあかんかと思ったけどね」。正直、岡本にはあきらめの気持ちもあった。相手はドリームメンバー2人なのである。でも、もう引くわけにもいかない。弱気を捨てて決死の覚悟で、迫ってくる山口を締めあげた。そして2マークをほとんど減速せずに強引に先マイ。山口はたまらず艇を引く。岡本の"気迫"がそこにはあった。もちろん、無理気味なターンだったので膨らんだが、ここで山口は失速。振り切ることに成功した。

一の矢は叩き落とした。次は二の矢だ。2マークで大きく流れてしまった岡本の懐に、今度は黄色のカポックが思い切り差し込んできた。松元だ。歓声と怒号に包まれるスタンド。そのホームストレッチで、差した松元の艇が岡本に届きかける。これは捕まると形勢は逆転する。だが「最終日の仕上がりは、ほんまに良かった」と、岡本のエンジンが噴き上げた。逆に松元の機力は中堅で、まだ弱い。岡本が松元に伸び勝ち、2周1マークを先取り。今度はターンを外さない。松元にリードをつける旋回をしっかりと決めた。今度こそ先頭だ! 勝負はここで決した。青いカポックは勢いよく体を弾ませると、歓喜のVゴールへ向け駆け抜けていった。

大阪、岡山、沖縄の武骨な男たちが見せた手に汗握る戦い。激しい息使いが聞こえそうな攻防。今回地元勢は見せ場なく沈んだが、それでも、今年の若松ナイターを締めくくるにふさわしい面白い一戦だった。

勝った岡本は、これが2002年7月以来の優勝。しかも、前回も若松だった。「ここは、ほんまに大好きです」。そう言って笑顔を見せた。久しぶりのウィニングランも、初めてのビクトリー花火も楽しんだようで、心から嬉しそうだった。眉は太く、目は鋭く、いかつく見られる風貌だが、この時ばかりは目尻を下げまくった。好相性な若松で久しぶりのVチャンスを生かし、約10年ぶりに掴んだ頂点。「ラストに優勝できて、今年はいい年になりました」と充実の表情で2012年を締めくくった。

来期勝率は5.72。A2級復帰。まだまだ稼いでもおかしくない。「来年は休まず、そしてまた若松に来た時は一生懸命頑張ります」。

迎える2013年。きっとまた、岡本はスタートでもターンでも観衆をあっと驚かすような面白いレースを見せてくれそうだ。


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