ボートレース若松優勝選手
平成24年11月17日
日本トーターカップ
太く勝ったぜ! 池永太が嬉しい地元初V
地元で咲いた満開の笑顔――。若松ボートの「日本トーターカップ」優勝戦が17日に争われた。スタート展示では2号艇・長岡茂一がインを奪ったものの、本番は1号艇・池永 太(27歳=福岡在住)がインを死守。しっかりと逃走を決めて勝利を挙げてみせた。これまで、福岡県のレース場でなかなか勝てなかった池永だったが、今回は地元声援に応える嬉しい結果となった。
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好漢である。
福岡支部の若手には、元気で明るい“いい男”たちが多いが、池永も負けてはいない。
快活で、屈託がない。取材に行けば、ハキハキと答えてくれる。同期の西山貴浩らとともに冗談を言い合って場を明るくすることも多い。さらに、ファンサービスなども手を抜かない選手である。
新人の頃からよく若松のペアボートなどのイベントに来て、お客さんを楽しませるために走り回っていた。昨年の東日本大震災後には、若松場内で募金活動にも汗を流した。A級に定着した今は、応援してくれる地元ファンも少なくない。
そんな池永だからこそ、今回、若松で優勝した喜びは大きかった。
「地元で初めて優勝できて本当に良かったです。もう最高ですね!」
レース後、まだ興奮や感動が冷めやらぬ状態で、池永は喜びの言葉を並べた。「ずっと、若松でビクトリー花火を見ながらウィニングランしたかったんすよ! 今日は水面際にお客さんがいっぱいでてきてくれて、そっちを見てめっちゃくちゃ嬉しかったです。実際、花火のほうはあまり見れてないっす」。池永はそう言って、最高の笑顔を見せた。
ただ、そんな彼だが、優勝戦は冷静な勝負師の顔をのぞかせた。スタート展示では、2号艇・長岡茂一が不意にインコースを奪いにきた。経験豊富な先輩の陽動作戦。若手は冷静さを見失うこともありそうな場面だが、池永は落ち着いていた。
「来たな、とは思いましたけど、展示から(無理な)抵抗はしませんでした。慌てることははかったですね。でも、今日の特訓で100mくらいの深い起こし位置のスタートも練習済みだったから、本番はインを取る気でした」
たとえ進入で先輩に絡まれても、覚悟をもっていた。ひるまない。そんな池永の気持ちに押されたか、いざ本番になると、長岡のほうが艇を引いたのだった。勝った。インにはしっかりと池永が構える。そこから、コンマ14のスタートを踏み込んでみせ、インモンキー発動。ただ、1マークは本人も予想以上に艇が流れ、池上裕次が差して迫ってきた。それでも、節一に仕上げたエンジンが直線で噴き上げ、2マークを先取り。ここで後続を突き放して、軍配は池永にあがった。
とにかく今回は「勝ててホッとした」という気持ちが強い。池永はそう語る。地元で勝ちたかったという気持ちはもちろんだが、それと同じく、後輩からの"無言のプレッシャー"もあった。池永が乗ったエンジンは前節に水摩敦が優勝してみせた17号機。それが圧力となって今節の池永の肩にズシリと乗っかっていたのである。「(2期後輩の)水摩くんがこのエンジンで優勝してるのに、これで僕が勝てずに帰ったら、『先輩何をしよんすか』って言われるところでしたよー」。池永は肩を下げながら笑った。今節はずっとプレッシャーとの戦いだったという。そんな中でも、初日ドリーム戦を快勝~予選トップ通過~準優1号艇~優勝戦1号艇で優勝という王道を突き進んだのだから池永は本当に強くなった。前節優勝者の乗ったプロペラ、エンジンをバトンタッチしたからといって、すぐに噴き上げるわけではない。「水摩くんのプロペラのままじゃ、自分はちょっと乗れなかったです。重いかなと思ったんで回転調整してました」。自分に合うように手を施し、見事節一パワーにして勝ち進んでいった。精神力も、技術力もまたひとつレベルがあがっている、今の池永を見せつけるシリーズだったと感じる。
これで今年3V目をゲット。5期連続でA1級もキープと安定してきた。「最近は兆しが見えました。調子はいいです」。今年はこれから、宮島、平和島、福岡と一般戦が続けて入っており、さらに優勝回数を積み重ねても何ら不思議ではない。
そして、年が明けてすぐに、再び若松への斡旋が決まった。2013年はここから始まる。「正月の若松もまた頑張りますよ! それと、来年は大きなレース、早くSGにいきたいですね! 今はもうそこしか見てないですし、SGに出ていろいろな経験を積みたいです」。しっかりとした口調で述べた抱負。福岡支部若手のいい男軍団の中から、また一人SG出場レーサーが出る日は、そう遠くないのかもしれない。
まだ見ぬ上の舞台を見据える。好漢・池永の視線は力強かった。