ボートレース若松優勝選手


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平成24年8月5日
GI第26回女子王座決定戦

鮮烈な速攻! これが山川美由紀の走りだ! 女王奪還3V


山川美由紀(香川)

準優10R後。1号艇で勝利を挙げ、共同記者会見を終えて足早に戻る平山智加。その姿を見つけた山川美由紀は、笑顔で駆け寄ってハイタッチをかわした。報道陣がほとんどいなかった通路。決してパフォーマンスな類ではなく、純粋に同支部の先輩が、後輩の勝利を祝福する瞬間だった。それと同時に、続く準優11Rの1号艇で戦う山川にとっては、後輩の平山から、勝利のバトンをそのハイタッチで受け取るようにも見えた。

ところが、山川は準優で2着になり負けた。負けてしまった。後輩、平山の前で。1号艇で当然インから発進した山川だったが、「1マークはターンマークにあたりそうになって、無意識にハンドルを切り返していた」。そこを、2コースの香川素子に差し切られてしまったのである。山川のターンが80点なら、香川のターンは100点満点だった。

まるで、荒波の海に光る稲妻のようにたかれたフラッシュの嵐。囲む報道陣。その中を、笑顔を浮かべて勝者の香川は歩く。反対に2番手ゴールの山川の顔には、悔しさが滲み出ていた。「2着で優出は喜べません」。自分への怒り、はがゆさ。後輩は勝ったのに自分は負けた。山川の表情は今節で一番ゆがんでいた。

予選は2着1着1着1着4着1着で首位通過。周囲の期待は日に日に高まるばかり。そんな優勝への王道を歩んでいたからこそ、表情が険しくなるのも当然だった。

だが、これが逆に良かったと筆者は思う。悔しさが、山川の闘志を増幅させたのだと。

それに優勝戦は4号艇。今節の山川の伸び足は良い。センター枠には適している。「田口さんの女子王座3連覇は、私が阻止します」。2号艇には今大会大きな注目を集めた田口節子が構えていたが、山川はそう宣言し、口を真一文字に結んで大一番へと向かっていった。かっこ良かった。勝つのは山川だ。そう感じた。

優勝戦は、5号艇・日高逸子の動きが進入予想を難しくしたが、結局は枠なりの123/456。「日高さんが何となく入れてくれた」と言う山川は、4コースカドを手に入れることになった。山川の代名詞といえばセンターからの豪快なマクリ攻め。それが出来る位置。あとはスタートをいくだけだ。準優のあの悔しさを燃料に混ぜ、山川のエンジンがうなりをあげる。そして、思い切り踏み込んだ。カドからコンマ09トップスタート! スリットの途中で、すでに山川がマクるのがわかるくらい、スロー3艇と山川の加速は違っていた。スロー勢に抵抗など、とても出来ない。山川が一気に飲み込んでいき、1マークを全速で先制ターン。その瞬間、ピットで見守っていた四国地区の選手などから歓声があがった。スタンドの方からも大歓声や拍手が聞こえてきた。そんな中、山川はバックストレッチへ。ただ、1マークで体勢を立て直した田口が、最内を差しあがってこようとする。3連覇を目指す艇先がジワリ、ジワリと近寄ってくる。だがその前に、山川がしっかりとそれを抑えるようにして2マークも先取り。ここで田口は後方へ流れていき、万事休す。決まった。軍配は山川。勝負アリ。

気持ち良さそうに2周目、3周目を先頭で走りきった女帝は、高々と腕をあげてガッツポーズでゴールラインへと飛び込んだのだった。

「いいスタートがいけましたね。4コースのカドがとれたことが大きかった。ガッツポーズはやってみたかったんです」。優勝戦後、そう言って山川は何度も笑顔を見せた。「準優は、本当に久々にヘコんで悔しかったけど、優勝戦は伸びを生かせる4号艇で良かったです」。準優の敗戦も、悔しさもバネにして得た勝利だった。

「若松に来る前に“優勝してくる”と言っていたんです。獲る気でした」。見事、有限実行。これが、山川の力だ。

これで女子王座は、2001年の多摩川大会以来3度目の優勝。鵜飼菜穂子らとともに歴代トップタイに並んだ。また、45歳10ヶ月での女子王座優勝は、日高逸子の持つ最年長記録をも塗り替えてみせた。2011年後期適用勝率では、自身最高の8点台もマーク。今年でデビュー27年目のベテランだが、力は衰え知らず。観衆に興奮と感動を与えてくれる。「私は気持ちだけで選手をやってる。今日戦った平山智加ちゃんとか、若い選手が活躍するから、私もモチベーションを保つことができます」。後輩達の躍進を刺激に、自身もまだまだ「負けられない」と存在を示していく。

勝者・山川美由紀。若松の初ナイター女子王座という歴史的大会に名を刻んだこのビッグネームは、いつまでも輝き続ける。


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