ボートレース若松優勝選手
平成24年7月18日
アサヒビールカップ
キレのあるSに、爽快なマクリ! 前本泰和が若松連覇V
台風7号が九州に接近した影響で、吹き荒れる強風に波立つ水面。穏やかでない水面で迎えたアサヒビールカップ最終日。そんな厳しい状況の中、誰よりも躍動したのが前本泰和だった――。
大一番の優勝戦。前本は3号艇に乗艇。対戦メンバーの中で、勝率はトップ。知名度は十分。ただ、それでも、観衆が断トツの1番人気に推したのは前本ではなく、1号艇に座った久田武だった。今節はこの人の名前無くしては語れない。初日から怒涛の9連勝。なんと一度も敗れることなく、このポールポジションの座を掴んだのである。
一方の前本は、初日を勝ちきれずの船出となった。ドリーム戦は3艇がもつれる熾烈な先頭争いの中で一時はトップも見えたのだが、敗れて3着。機力はイマイチで、決して明るい表情ではなかった。
だが、それが準優直前に好転した。「整備、プロペラ叩いて全体的に上向き。今なら戦える足」と言えるほどまで舟足上昇。特に出足だ。セミファイナル準優は、3号艇ながら2コースに動いて1着奪取。準優日も強い追い風が吹いていた水面。追い風が強い若松は、インの艇がよく流れる。それを分かっていたかのように、前本はしっかりと2コース差しでイン選手をさばいて優出切符を掴んだのである。
機力は十分仕上がった。スタートも行く気。「優勝できるよう頑張ります」。そう短く言い残して本番へ向かった前本は静かに燃えていた。
優勝戦時の風速はホーム追い風6m。スタートは難しい。だが、前本には躊躇などない。3コースからコンマ11の全速快ショットでスリットを一気に通過。インの久田(コンマ19)、2コースの大場敏(コンマ18)を飲み込んでいき、疾風マクリ一撃! 豪快な攻撃で、内の艇を撃破したのだ。前本の攻めに乗ってマクリ差しを狙った4コースの鈴木勝博は、インから突っ込んできた久田と接触して悔しい失速。その間に、前本がバックストレッチでリードを広げる。そのままの勢いで2マークも先マイ。あとは、しっかりとトップを守りきりVゴールへ。久田の完全Vを阻止してみせたのだった。
この天候のため打ち上げが直前まで心配されていたビクトリー花火も、なんとか無事に祝福の華を咲かせて前本を称えた。
彼はこれで今年2回目の優勝。通算では70回目の優勝を数える。若松では連覇達成。前回もちょうど1年前の7月、マクリ一気で内艇3人を叩いての優勝だった。当地勝率は8.30を超えるだけあるし、さすがの勝負強さを見せつけるV戦だっただろう。
優勝戦後の前本は、陸の動きも速かった。台風の突風のような速さで帰り支度を済ませる。そして瞬く間に、若松ピットを後にしたのだった。照明も落ち、暗闇になった若松水面には、前本が巻き起こした興奮の熱気だけがまだ残っているようだった。