ボートレース若松優勝選手


王冠過去の優勝選手

平成24年6月14日
GI全日本覇者決定戦 開設60周年記念競走

漆黒の闇を切り裂いた黄色の光! 吉川元浩が大外優勝だ!

写真
3854 吉川元浩(兵庫)

「ごっつい配当ついたでしょ?」

優勝戦を制した吉川元浩に、舟券予想が当たったことを話すと、笑ってそう答えてくれた。

2連単は28番人気(9,610円)、3連単は107番人気(40,070円)。この一戦での吉川は、ぶっちぎりの人気薄だった。「よく買えましたね」。当人も、オッズが高いことは分かっているようだった。ただ、人気が薄いとはいえ、吉川にチャンスが無いわけではなかった。

前日に優勝戦メンバーの顔ぶれを見て、一筋縄で終わるわけないと思った。6号艇・西島義則がコース動いて、1号艇・今垣光太郎に絡みに行くのは確実。両者の進入が深くなった時、誰が一番に攻めていくのか。岡崎恭裕が攻めていくと言う人もいれば、中島孝平のマクリという人もいる。今節鋭いスタートがバシバシ決まっていた前田将太の一気攻勢も多く話題にあがっていた。

だが、何だかそれが引っかかった。攻め手がはっきり分からない。岡崎も中島も前田も似たタイプ。我先に攻めていく強攻武闘派というより、攻め手の隣で柔軟に展開を見てさばくことが多い技巧派である。

同じタイプがセンター位置に揃えば、躊躇がある。1マークも乱れる気がした。しかも、優勝戦当日は強い追い風。1マークで握った艇はふくらむ。イン艇であれマクリ艇であれ、若松の1マークでは旋回にズレが生じる。そうなれば、しっかり落として差しにいく艇の効果は絶大。そんな気がして、大外から“差し1本”に絞ってくるであろう吉川を軸にした。

優勝戦は、まさに1マークが乱れた。それもド派手に。進入は162/345の隊形。追い風は6m。1号艇、6号艇の起こしはやっぱり深い。100mより短くなろうとしていた。こうなればセンターに好機だが、3コース岡崎が痛恨のスタートへこみ(コンマ19)。カドの中島(コンマ09)はのぞいていった。だが、インの今垣も伸び返してきて1マークに突っ込んでくる。中島はほとんどレバーを放らず、1マークへ突入。“とにかく先にマクるんだ”といった意気込み。しかし、この強い追い風ではもちろんボートが流れる。舟のサイドがかからず木の葉のように外側へ流れて後退。この展開に、5コースの前田は展開を見て差そうとしたが、差しに構えた西島、さらに今垣や岡崎と次々に接触して万事休す。

強い追い風が1マークに生んだ激しいドラマ。歓声と怒号が渦巻く中、混戦の中を突き抜けてきたのは大外から一気に差した吉川、そして2コース差しの西島だった。差し=差しの両立である。

バック直線では、西島が半艇身ほど前にいたが、その内側から吉川がスルスルと伸びて西島に艇を並べた。「西島さんには追いつく感じがあった」と、自慢の伸び足で相手を捕獲。内に吉川、外に西島。この隊形なら、吉川が有利。負けられない。2マークは意地でも先マイを打つ。風は強いがしっかり旋回し、鬼将・西島を振り切ってみせた。そうして、GI14回目の優勝ゴールへと飛び込んだ。

「まさか、1着とは思わなかった。(ボートレースは)何があるか分かりませんね」

吉川はいつまでも驚いた様子で、この乱戦を振り返っていた。ただ、1マークでしっかりと展開を突いてくるハンドルはさすがSGレーサー。そういえば、2007年のSG賞金王(福岡)でも、トライアル3日目に5号艇6コースから1着を取り観衆の度肝をぬき、そのまま賞金王にもなった男である。

帰り支度をする吉川に、競技委員長が「さすがSGで走り慣れとるだけあるな」と声をかけると、吉川は少しだけ口角をあげて笑みを見せた。これで、若松周年は2度目の優勝。本当に相性が良い場所である。

最近の吉川は、4月のびわこGⅡ戦でフライングを切ったし、スタートで悩まさた。今節はフライング休みもまだ未消化だった。それでも、彼はその集中力で一戦一戦を戦い抜き、優勝という結果を残してみせた。そこに大きな価値がある。

「最近はフライング休みが多いですけど、これからも目の前の一走一走を頑張るように心がけます」

今後はフライングで8月13日まで休みだが、今回の若松周年Vで最高の形で休みに入れる。

それが明ければ、次もまた、ごっつい走りでスタンドを沸かしてくれるはずだ。


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